LEO KOMINZ
「ココロ」と「カラダ」のおっさんROAD
E_
49

晴れて二十歳になった時、当時まだほやほやだったSNSサービス「フェイスブック」にて、「二十歳になったけど、全く『大人』になった気がしない」と言う投稿をした。フェイスブック自体は、良くも悪くも今ほど世界の隅々までを巻き込む媒体となってはいなかったが、それでも友人や、友人の友人レベルではこの投稿はそれなりの議論となり、「いや、リオはもう大人でしょ」から「正直自分も全然わからないっす…もう24だけど」といった、両極端な意見が繰り広げられた。当時の自分は、年齢という数字が「20」というものになっただけで、法的にも世間的にも「子どもを卒業した」という感覚が全く理解できず、漫画「スラムダンク」のゴリが18才で、「ワンピース」のルフィが17才で、なんなら「GTO」の鬼塚英吉が22才という中で(これは自分も22になった時にさらに強く感じたが)、自分の「20」という数字に何一つ意味を感じることができなかった。オリンピック選手などに見られる、10代でなんらか目に見える実績を残した人間ならまだしも、僕はただ日々惚けながら年齢を重ねていっただけ。「二十歳、おめでとう!もう大人の仲間入りだね☆」「ありがとう!(ニコッ)」ってなるか?なるわけないでしょう。そしてその後、かなり紆余曲折な20代を過ごした身からすれば、例えば椎名林檎的が提示する「30才を本当の成人にすべき」には大変共感するのだが*1、同時に、100年遡るだけで、齢20ではもう一家の主人だったり、戦争に行って命をかけて戦っていたり(これは現代でもあることだが)、自分が好きな偉人たち、坂本龍馬からチェ・ゲバラまで、フリードリヒ・ショパンから石川啄木(人間としてはクソだが作品は大好き。天才あるあるよねw)まで、20代で物事を成し遂げたからこそ、結果早世しても世に影響を与えられた、ということも、今だからこそその本当の意味を理解できる。

さて、齢30になった今、世間的には当然として、自分の中でもさすがに自分はもう「大人」だとは感じているが(あまり「大人」らしい大人だとは思わないがw)、「大人かどうか」の心配はなんのその、実はもう次に控えている人生のラベルがあり、それが「おっさん」と呼ばれるもの。光陰矢の如し!なお「おっさん」と言うラベルは、現代に存在する「元服」や「カミング・オブ・エイジ」*2である、いわゆる「成人」(=大人)ほど、世間的にも法的にもその瞬間が定められている訳ではないが、確実に、あるタイミングで、必ずこの地球上に住むどの男性もいずれ「おっさん」になる。そう、それは決して避けられないさだめ。シュッとした体系を保ち、ヒゲや髪の毛に潜む銀髪がオシャレに光り、大人の男のフェロモンを醸し出す「ちょい悪LEON系ダンディーおじさん」になるか、お腹周りの贅肉がタイヤのように膨れ上がり、頭皮も薄くなり、寝室の枕に加齢臭が少しずつ染み込み始める「『お父さんの後のお風呂は絶対にいや!!!』系おっさん」*3になるかは人それぞれだが(というか人それぞれの努力によるが)、男とは必ずおっさんになるものだ。

そこで疑問があがる…「男はいつ『おっさん』になるのか?」だ。エンタメやクリエイティブ業界に身を置いているせいか、「胡散臭いおっさんになりそう」でも書いたように、30~40代になっても一般的に「若い」と言われる人が周囲にはたくさんいる。しかし、では「若い」彼らが「おっさん」じゃないかというと、そういう訳でもない。普通に「年齢にしては若く見えるおっさん」たちなのだ。ということは、そこには何か、肉体や見た目などとは根源的な違いがあるのだ…

===

分析に入る前に、一つ類似するトピックスをあげたい。それは「男は40になっても結婚できるからいいよね」問題だ。この問題は、主に婚期が迫ってきている女性(正しくは本人が婚期が迫ってきていると思い込んでいるがゆえに焦っている女性)がよく提示するものなのだが、彼女らの言い分としては、「我々女性は子どもを産める生物学上のリミットがあるため、遅くても30代の半ばぐらいまでは結婚相手を決めないといけないが、男性は精液を作り続けられればいつでも子どもを作れるため、結婚のタイムリミットがなくて卑怯だ」というもの。この論を唱える女性は非常に多く、人生の様々なタイミングで、全国津々浦々で出会ってきた。ただ、一見正しく感じられるこの「男は40になっても結婚できるからいいよね」論、実は大きな見落としがある。

確かに、物理的に男性はいつでも結婚できる。50代60代で結婚して子どもを作っている男性もたくさんいる。しかし、これは物理的なハードの部分、「カラダ」の部分でそうだ、というだけ。多くの女性が見落としている事実は、結婚するためには、結婚にたどり着けるソフト、「ココロ」の部分が同時に必要だということ。平成27年度の国勢調査によると、日本に置いて40~44才の男性の未婚率は29.9%と、実に3人に1人ほどだ。じゃあ、この人たちが「男は40になっても結婚できるからいいよね」と思いながら生きていったら、どうなるのだろうか。結果:45~49才の未婚率は25.8%。そう、4%しか減っていない。さらにその先、50以上となると、そのまま4人に1人の男性が未婚なのだ。そこで、周りで40代で結婚した男性を思い返して欲しい。(周りにいない場合、この際、「この相手のかた、どう考えても遺産目当てなのでは?」と思わせるような芸能人の年の差婚でもいい)結婚できている男の共通点は「20~30でも結婚できたけどしてこなかった奴ら」なのだ。そう、そこにこそ「ソフト」の違いが出てくる。20代で20代の女性とと付き合い、30代でも20~30代の女性と付き合い、40代になっても20~30代の女性と付き合ってきた男が、「さて、そろそろ俺も落ち着くかな。やっぱり子どもも欲しいし、親も『いつ結婚するんだ!』ってうるさいし」となり、結婚を決意するのだ。20代も彼女がおらず、これといった女性経験もなく、30代も以下同文みたいな男が、40代になって突然女性と付き合いを始め結婚する、みたいなケースは極めて少ない。だから、性格が悪い私コミンズ・リオは、まるで敵将を討ち取ったかのように「男は40になっても結婚できるからいいよね」と言ってくる女性に必ずこういう:「20代の若くて可愛い女っていつでも結婚できていいよね!」と*4。

さて、話は脱線した…と、思いきや、実はこの「ソフト」の部分、実は大いに「いつからおっさん?」論に関わってくる。そう、「いつからおっさん?」の問いの答えは、多くの場合、どのタイミングで「自分はおっさんか」を意識しているかに寄るのだ。そういう意味では、世間や法ではなく、感覚としてもつ「いつから大人?」と近い。一つ例によく出すのが、「二十歳の女性をどう見るか」である。おそらく、25~27才の男性だと、二十歳の女性と会って、多少はその子のことを若いとは思っても、そこまで違和感はないだろう。しかし30代になると、俗に「ひと回り違う」と言うだけあって、本当に、言葉以上に「若く」感じてくる。新入社員を迎えた会社の飲み会で、「え、俺が高校2年生の時に、〇〇さんは小学校1年生…?」みたいな会話が繰り広げられ、おっさんの方はいつの間にか過ぎ去った時の量に絶望しかけ、新入社員のほうは「またおっさんの年の差トークかよ…あんたと何歳差とかどうでもいいわ!」という気持ちを当たり障りない笑顔で隠すのだが、まさにこれである。ひと回り近く年下の人間に対して「やべえ、こんな年の差があるのか…」と思い始めた瞬間にあなたは長い長いおっさんロードの最初の一歩を踏み出すのだ。

そこで、改めてあの、毎年1人や2人は出てくる、年の差婚に至った芸能人たちを思い返して欲しい…えーと、あいつら単純にすごくね?例えばだが、22才の魅力的な女性に対峙した時、多くの男性が「え、10以上も違うこの子とはさすがに…」とか「え、娘の年齢と大して変わらないじゃないか…」と思い、おっさんロードの彼方へと一歩一歩確実に踏み込んでいく中、彼らは「うひょーい!若い子大好き!!結婚するのはピチピチなこの子に決めた!」となれるのである…。生物である以上、カラダ的にはさすがに「おっさん」は免れることはできないが、「ココロ」は違う。おそるべし、脱「おっさん」のココロの持ち主たち…!!*5。

まあ、でもポジティブに考えてみたら、もしかしたらそれは希望なのかもしれない。特に、結婚の希望が見えない私コミンズ・リオみたいな男には。そこで歌おう。2019年末、ラグビーワールドカップにて記録的な快進撃を繰り広げている日本代表が士気を上げるために歌っていると言われる、「カントリーロード」の替え歌「ビクトリーロード」…のさらに替え歌「おっさんロード」。どうぞ、ご静聴あれ。

♪「おっさんロ〜ド、この道ぃ〜、ずぅーとぉ〜、ゆけばぁ〜♪ たどり着〜く、若くて〜、可愛いこぉ〜、との結婚〜♬」

*注’s*

*1: ここにある根本的な考えは、現代に置いて20代はほぼ自分探しみたいなものでしょ、と言うもの。先進国に生きる現代人のマジョリティは、20才ぐらいまでは義務教育と親の庇護という二つのレールに乗っかってるだけなので、自分の人生や価値観や思考について本当に探検し、選択し、行動に移すことができるのは20代になってからで、そこに10年ぐらい費やしてもいいのでは、という考え。大いに共感します。

*2: 現代でも、当然だがアフリカや南米の部族でもこういった儀式は存在するし、世界中にあるほぼ全ての文明のルーツにも確実に存在する。歴史的に見ると、人間社会に置いて「お前は今日から大人だ!」というレッテルをつけることは、超が三つつくほど重要なのだ。

*3: テンプレなので記載します。「お、お父さんの後のお風呂の何が嫌なんだ!?」「だって、なんかヌルヌルしてそうなんだもん」「ヌ、ヌルヌルだと…??(昔は『大きくなったらお父さんのお嫁さんになる!』って言ってたのに…号泣)」

*4: 若い女性ならこの文章を読んで「え、全然違うじゃん。何言ってんのコイツ?」って思うかもしれないが、今一度よく考えてみて欲しい。普通に綺麗で若かったあの30代半ばの未婚女性…あの人、本当に20代で結婚できなかった?よく考えて。思い返してみて。1、2回はチャンスがあったんじゃない?それを、いろんな理由を作り上げて、その時はあえてしなかったんじゃない?改めて考えてみて…。そう、結局「ハード」は揃ってるけど「ソフト」が整ってないという共通点がそこにあるのです。

*5: 若干話がずれるので本編では触れないが、若い女性は年上の男性を受け入れる体制がそもそもできている、と言う事実を忘れてはいけない。なおこれは社会が多少なりとも作り上げているものであり、例えば入社三年目社員(♂)が40代前半課長(♀)と関係を持っていたとしたら「重度な熟女好きの特殊性癖」となるのだが、入社三年目社員(♀)が40代前半課長(♂)と関係を持っていたら「はいはい、よくある不倫劇ね…」となる。「もうおっさんなのか…」と葛藤する世の男性に、実に多種多様な形で新たな問いを投げかけるのがこう言った女性たちである。やっぱり若い女は恐ろしい…ガクブル((((;゚Д゚)))))))

text:
コミンズ リオ
illustration:
peeeechan
V_
v02
18-04-02