LEO KOMINZ
【妄想心境】Cute Little Girl (in Love)
E_
38

【妄想〜ザ・アイツの心境〜シリーズ】とは?

幼い頃から日常的に、小一時間ほど窓の外を眺めぼーっと妄想を繰り広げ、両親に「この子…大丈夫かしら?」と心配をかけてきた私コミンズ・リオ。この【妄想〜ザ・アイツの心境〜シリーズ】では、体ばかり大人になったそのリオが、(おそらく)いつの日にもならないであろう「アイツら」の日々の心境に関して全力で妄想してみる、という、前置きの説明書きがついても全く解りやすくならない文章です。とりあえず読んでみ。

=======

多様性が増えている世の中を平和にかつ楽しく生きていく方法として、許容性の範囲を広げることと、相手の立場に立って物事を考えることの重要性が以前にもまして強くなってきている。人種、性、宗教、国籍など色々分野はあるなか、最も根本にある、「男女のお互いへの理解」は、当たり前すぎるのか、意外にもトピックスの上位にはあがってこない気がする*1。しかし実態としては、「人間のオスは人間のメスより、チンパンジーのオスに近い」という冗談が言われるほど、男女の考え・感覚・価値観などは多くのケースで異なっている。

この違いこそが、「男は女がどう日々感じているのか全くわかっていない」という一種のフェミニズム的思考の根底にあるのは確かで、「夜道を歩く女性がどれだけ危険を感じているか」や「痴漢やセクハラなど、いかに女性が日々性の対象として扱われているか」などはよく上がる例である。これに対して、ひねくれ者である自分は、「いや、ニューヨークのイースト・ハーレムの友達の家を真夜中に出て、頼んどいたUBERがなかなかこない中、街灯もなく人も歩いていないと気付き、『俺、このまま誰かにナイフで刺されたら誰にも気づかれずに野垂れ死ぬな』と瞬間的に感じた時の恐怖」や「渋谷のスクランブル交差点を渡っている時に、派手なギャルグループを通り過ぎ去った瞬間、何人かにお尻を弄られ、振り向いたらケラケラ笑われた時の屈辱」など、意外にも男の自分にも近い体験はあるよ、と言いたくなる。そもそも「山盛りご飯の共感性」で書いたように、人間はなんらか近い経験で他の人の経験と共感できる生き物だよ、とも言いたくなる。なお、この回答に対して彼女たちが「そんな一回あったかないかもわからないような体験を我々が日々感じていることと一緒にしないでくれる?得意げに体験を振りかざして…そもそも男には共感不可能なのよ!」と鬼気迫る勢いで叩いてくる可能性が高いのはすでにわかっている。

ただ、そこで敢えて言いたい。俺の妄想力をナメるなよ、と。私コミンズ・リオ、幾度となく自分が女性だったらどういう感覚なのかと妄想をしてきたし、それがあまりにリアルなため、友達と共有するたびにドン引きされたり気持ち悪がれたりしてきた。その中の鉄板ネタが、キュート・リトル・ガールだ。この妄想は、現在184cmで、日本で生きている限りはほとんど人を物理的に「見上げる」ことがない自分が、ちっちゃくて可愛い女の子だったら世界はどう見えるのだろうか、という実に楽しく、実は意義深いものなのだ。

まずだが、例えば自分が152cmだとしよう。日本の女性の平均身長が159cmぐらいなので、女友達と一緒にいる時でさえ、立ってたり歩いてたりするときは、ほとんどみんなを見上げている状態になる。そして、男性に至っては人口のほぼ100%が152cm以上なので、世の中の9割近く*2が自分より大きいのである。今の自分の人生からは想像もできない状況だ。

そこである日、「自分」みたいな男に出会ったとしよう。要するに、184cmの男性である。そして、色々経た後、その男性となんかいい感じになる。ここで、152cmを、今の自分に置き換える。152cm と184cmだと、ざっと1.2倍の背丈である。184cmの自分からしてみたら、184 x 1.2 で 220、2メートル20センチのパートナーができた感覚である。

…え、220cm…??ちょっと待て…さすがにデカすぎね!?*3

さらに彼の体を触ってみるとゴツゴツだ。毛もいろんなところに生えてる。匂いもなんか独特(人によっては、コホン、臭い…)。まあ、でもなんか雰囲気いい感じだから…えーと、キス迫ってきてる…?自分の顔(てか顎)をかなり上にあげて、覆いかぶさってきたものは、一応柔らかいけどなんかカサついてる唇と、ジョリジョリな髭…。

ただ、いい雰囲気は続いている…ベッドへと向かい、服を脱がされる。相手も脱ぎ始める。やばい、この人、さらにいろんなところに毛が生えてる!乳首の周りとか、あれどう言う原理で生えてるの?さらに、シャツを着てた時とは想像できないぐらいお腹が…出てる。よく言えば着痩せだが、悪く言えば詐欺だ。そしていよいよ、始まる。自分より1.2倍大きく、ゴツく、硬く、毛むくじゃらな生物が、上からのし掛かってくる。最後には、自分にはついてない、文字通り「異物」が自分の中に挿入される…

…ってまじで、女性ってどうやって生きてるんだ?こんなの完全に恐怖体験じゃないかよ!!220cmの大男が上から襲ってきて、体内に肉の棒を突っ込んできたら、私コミンズ・リオはもうトラウマそのものですよ*4!! 女性はどうやって毎日こんなことがありえる中、日々を安静に過ごしているんだ??

そこで一つ忘れていた、重大な事実に気づく。そうだ、この女性は「好意」を抱いているのだ。極論を言うと、それは「恋する女性脳」。キュート・リトル・ガールではない、キュート・リトル・ガール・イン・ラブなのだ。そうすると色々と合点がいく。大きいのは「怖い」のではなく「守ってくれそう」なのだ。体は「ゴツい」のではなく「逞しい」のだ。匂いは「臭い」のではなく「フェロモン」なのだ。「覆いかぶさり、のし掛かる」のではなく「優しく包み込んでくれる」のだ。異物の挿入は「愛を確かめる行為」なのだ。

そして、だからこそわかることが、「同意」の重要性である。一例をあげると、アメリカの大学で年々問題となっている性行為に置ける “consent”=「同意」の問題だ。全米中の大学キャンパスにて数々の性的暴行事件の報告を経て、性行為が同意の上だったのかレイプだったかのを、今では「完全に同意」の場合以外は、全てレイプと判断している。その判断、今回の妄想でとてもよくわかる。僕も220cmの大男が覆いかぶさってきたら、本心が「本当は嫌」だとしても、恐怖から受け入れてしまうと思う。それぐらい体の大きさ、体格、力の違いが男女にあり、「好意を持っている相手かそうではないか」によって、全く同じ行為が愛情表現から性的暴力に変わってしまうのだ。

「来世は絶対に超可愛い女の子になって、たくさんのモテ男や金持ち野郎を手のひらの上でコロコロしてやる!!」と、今までモテて来なかった人生がゆえに醜く歪んだ願望をもち、そう発言するたびに周囲の老若男女から白い目を向けられてきた私コミンズ・リオだが、今回の妄想で少し考えを改めるべきかもしれないと思った。誑かし弄んだがゆえに、自分より大きく凶暴な男どもに報復されるのは正直怖い。ここは平穏に「来世は絶対に超可愛い女の子になって、めっちゃモテて、たくさんの素晴らしい恋愛をしよう」に変えよっと。

 

*注記s*

1: やはりどうしても性におけるホットトピックスはLGBTQを中心に回っているのは確か。しかし、本編にも出てくるアメリカの大学で話題になり、一時期メディアにも連日取り上げあられた「consent=同意」問題のように、定期的にシンプルな男女問題も上がってくる。

2: 身長分布。http://statresearch.jp/BMI/index.html

特に若い人の中ではさらに小さく感じられるであろう。140~154センチの女性の多くは高齢者だから。

3: 以前、たまたま恵比寿駅の日比谷線の出口から出てきたとき、想像を絶するぐらい大きい男性を見かけ、迷子そうにしていたので声をかけてみたら、その当時、オクラホマシティ・サンダーに所属するNBA選手、スティーブン・アダムスだった。アダムスは213cm。ラーメン屋を探していたので案内をしたのだが、普段上を向いて話すことに慣れてないせいか、ラーメン屋にたどり着いた時には首が痛くなっていたのを覚えている。また、アダムスと一緒にいたおそらく彼女が160cmぐらいだったことにも驚いた。もはや小人みたいに見えた。

4: 男なら基本的に誰でも同意できると思っているが、この「自分の中に他の人の何かが入ってくる」という感覚は一番理解できない。生理的に受け付けないというか…。唯一近い状態があるとすれば何だろうか…気持ち悪いときに、吐きやすくするために、他の誰かが自分の口に指を突っ込んでくる時ぐらいだろうか?マジで極端すぎる。

text:
コミンズ リオ
illustration:
Nagi Kamahara
V_
v02
18-04-02