LEO KOMINZ
モテないメンズ・ラプソディー(前編)
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結局、モテないメンズが好きなんだと思う。40年以上も優勝していない地元のNBAチームを齢5歳*1から応援してた背景が影響しているかはわからないが*2、昔からアンダードッグ・スピリッツが根幹にあるのが私コミンズ・リオ。中学校時代、父親の仕事の関係で東京に一年住むことになったが、当然応援するのは巨人よりヤクルト。最初から強いものになど興味はない。弱い立場の人間や会社や組織やチームが、知恵と努力と連隊の力で強者に勝つのが面白い。「ダビデ対ゴリアテ」から「スパルタ民族対ペルシア帝国」まで、ジャイアントキリングからシンデレラストーリーまで、いくつもの違う名称や姿形はあるが、どれも変わらず心を燃やしてくれる。そして、今回のテーマであるモテないメンズこそ、社会に置ける、あまり意識されない「弱い立場」の人間なのである。

まず、「そもそもなぜお前がこのテーマを語るのか」という読者に対する疑問には、私コミンズ・リオこそモテないメンズの一員だから、と答えたい。いや、ごめん、少し違う。出会ったばかりの人からはよく「本当はモテるんでしょう?」と訝られるのでこの際はっきりと言いたいが、確かにモテる対象の人たちはいる。基本的には子供・老人・性的マイノリティー・変人扱いされる男・「社会的弱者」や「アウトサイダー」」にカテゴライズされる多種多様な人たち…こういう人たちにはよくモテる。逆に全くモテないのが、「若い女性」と「権力・資金力のある男性」だ。なぜモテる・モテないのかの理由は自分の中ではある程度はっきりしているが、長くなるのでここでは割愛する*3。そして、今回のテーマである「モテないメンズ・ラプソディー」に当てはまる「モテない奴ら」は、詳細でいうと「若い女性にモテない」奴らなので、私コミンズ・リオ、語る権利は十分にあると思う。

次に、そもそも「モテる」とはなんぞや、という疑問が上がってくる。2018年の個人目標を無謀にも「バスケットボールをダンクする」と「女性にモテる」に設定した私コミンズ・リオ、実は2018年の頭数ヶ月をかけて、数々の女性に「モテる」の定義についてヒアリングを行った*4。そこで、基本的に世の女性が考える「モテる」は、二つの種類に分類されることがわかった。一つは、少女漫画に出てくるサッカー部のキャプテン先輩のような、教室の外から一目見たいと下級生たちが廊下の窓から覗き込んでくるほど、不確定多数の女性から一方的に好意を寄せられる種類である。もう一つは、「あの子、かわいいじゃん♪」と思って狙った女性を必ず、もしくは高確率で「落とせる」種類。この二種類の定義は実はとても重要で、例えば漫画「花より男子」に出てくる道明寺司のように、学園中の女生徒の憧れでありながらも、自分が一番気になっている作品の主人公・牧野つくしを落とせない彼は、果たして本当に「モテる」と言えるのだろうか、というなかなか深く酔狂な疑問が上がってくる。

だが、それでいうと、モテないメンズにおいてはそもそも上記自体があまり意味を持たない。なぜなら、モテないメンズは結局どっちの種類でもモテないからだ。不特定多数の女性から想いを寄せられることもなく、自分が好きになった女性とも付き合えない(やばい、文字にするとより悲惨さが込み上がってくる)。また、何がさらに辛いかというと、世の中は「モテる」と「モテない」のメンズに二分割されていないところだ。実は、世の中は「モテる」「普通」「モテない」の三分割なのだ。「普通」の人は、全員とはいかなくとも、人生で一度や二度は好きな人と付き合えたり、人生で最低一度は誰かに告白されたりしている人のことを言う。どうだ、普通っぽいだろ。そして当然だが、世の中のマジョリティが「普通」で出来上がっており、さらにその上位に君臨しているのが「モテる」クソ野郎どもだ(おっと、感情が昂ぶってつい口調が荒くなってしまった)。なので、おそらくこの文章を読んでいる、今まで「いや、俺、別にモテないよ!」と思っていたほとんどの読者も、実は「普通」と言うマジョリティには属しているので、そんなあなた方にこそモテないメンズが遭遇する現象をいくつか紹介したい(おそらくモテるやつはこんなエッセイ読んでないので(笑))。

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Except Me現象 (EM現象)

モテないメンズが日々遭遇する辛い現象の一つが、「Except Me」=「自分以外」現象だ。この現象は、女性と「何か」あるかもしれない可能性が、自分以外とで行われている実状を指す、だけではなく、残酷にも女性がそれを悪びれもなくモテないメンズ本人に伝えてくるところにもある。例えば、わかりやすいのが「自分以外とは朝まで遊ぶ」ケース。よく一緒に飲んだりする女友達がいるとすると(モテないメンズにも女友達は一応いる)、彼女は「いや、この前ちょっと久しぶりに朝まで飲んじゃってさ…こんな歳だし、もうやることじゃないよね」などと、失敗談のはずなのにちょっと嬉しそうに話してくるが、モテないメンズが思っていることは「それよく言うけどさ、俺とは一度もそんなことないよね。毎回終電よりずっと前に帰るじゃん…」である。これに似たケースで「自分以外とは酒を飲む(「昨日飲みすぎちゃったから」などと言った理由でいつも自分の前では酒を飲まない)」「自分以外の前では化粧をしてる(「いやぁ、すっぴんはやっぱり楽だわ〜」、などと、自分にはわざわざすっぴんをアピールしてくる)」などがある。

そもそもこのEM現象の名付け親となるのが、以前アメリカのなんらかのネット掲示板で読んだジョークからきている。そこでは 「Slut」(訳:ヤリマン、ビッチ)の定義を “A slut is a girl who sleeps with everyone except me” (ヤリマンの定義は、自分以外の男全員と寝る女)と書いてあり、モテないメンズ脳をあらわす実に秀逸な例だと思った。確かにそうだ。自分がその女性をちょっといいなって思ってるのに、自分以外の男性とはたくさん関係をもち、自分は置いてけぼり。自分とさえ関係を持ってくれれば、その彼女は、「ヤリマン」から「ちょっと性に奔放な女性」や「自由恋愛を謳歌する女性」に変わるのに。明らかな恋愛経験不足から来る自分中心主義…このマインド自体が相当モテないメンズ的であり、ヤリマンと罵っているその女性が、このモテないメンズ代表と関係を持たない理由が悲しいけどはっきりと見て取れる…。

このEM現象の根本にある状態は、女性側が全く持って男性側を「男=雄」として見ていないことにある。女性側からの、「万が一にも男女の関係にはなりませんよ」と言う明確な意思表示。化粧をすることは一定レベルの本気度の表れだし、万が一の「過ち」が起こるのは双方がすごく酔っ払っていたり、終電を逃してどちらかの家に行かなくちゃいけない時だったりする。モテないメンズはモテない人生を送ってきてるので、基本的には女性との会合に置いて甘い期待はあまりしていないのだが、そこは一応男性、なんらか魅力を感じる女性と会うときはちょっとは「今回こそ何かあるかも…」と思ってはいる。しかし、そこで「すっぴん」「早期帰宅」「ノー飲酒」などの、始まる前からのはっきりとした女性側の意思表示が見られると、流石に傷ついてしまう。そして雄としての自信をさらに無くし、恋愛に置いてさらに期待値を下げ…と、どんどんモテないデフレスパイラルに落ちていくのだ。

Stuffed Nose 現象(SN現象)

「ヤリチン」と呼ばれる種族の男性がそもそも「モテる」部類に入るかは議論が必要だが、ヤリチンとモテないメンズの一番の違いは「嗅覚」にあると思っている。何人かのヤリチンの知り合いはいるが(ヤリチンの定義は注釈*4を見ていただきたい)、彼らのすごいところは、女性を相手にすると、(言葉は下品だが)誰が「やれそう」で、誰が「やれなさそう」かを見抜く力だ。しかも、ただやれる・やれないだけではなく、「ちょっと口説いたらすぐいけそう」「酒の力を借りればいけそう」「時間をかければ行ける可能性は高い」「時間をかけても難しいかもしれないが、時間をかけてみる価値はある」「『付き合ってる人としか性行為をしない』などの難攻不落タイプ。基本的には時間の無駄」など、無数のグラデーションを見分け、そのケースバイケースで的確な行動に出られるのだ。この能力を「嗅覚」と僕は呼んでいる。

それで言うと、モテないメンズは生まれてこのかた極度な鼻炎状態みたいなもの。ゆえに「Stuffed Nose = 鼻詰まり」現象。嗅覚どころかそもそも臭いすら感じ取れていない。モテないメンズにありがちなのが、嗅覚が死んでいるがゆえの、外部からはどう見ても無謀な挑戦をし続ける行為。「『モテないメンズ』にモテる女性」も何人か友達にいるが(もっと辛辣に言えば、童貞臭い連中からよく告白される女性)、やはりこれらメンズのタイプは似ている。綺麗目で根が明るい女性に少し優しくされ、勘違いしてしまっているパターンが多い。今風に言えば「ちょろい」奴ら。そこがヤリチンだったら、同じような関係にいる女性のタイプを見極め、攻めるか攻めまいか、攻める場合はどのパターンでいくか、と行動に移すのだが、モテないメンズは「好きになったから」という、漫画「かぐや様は告らせたい」的に言えばすでに「負け」状態にある。その状態から、執拗にアタックしたり、アタックのち振られても、どこかの恋愛マニュアル本に書いてあった「何回目かの告白でその子の気持ちは変わるかも!彼女は実はキミの一途さを試してる!」と言う情報をバカ正直に信じ込み、なんども告白したりする。はっきり言うが、実に痛々しい。(この文章を読んでいるモテないメンズに言いたい。なんどもアタックしてうまくいくのはモテる男だけだよ。モテないメンズは「友達認定」された時点で試合終了なの。恋愛版の安西先生なんていないの。泣きながら心のバッグに恋愛甲子園の砂を詰めて潔く帰りましょう。)そして、8回ほど振られてやっと、本当にその子は全くもって自分のことを恋愛が可能な対象としては見ていないことに気づく。そこから雄としての自信をさらに無くし、さらに期待値を下げ…と、どんどんモテないデフレスパイラルに落ちていくのだ。

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…他にもいくつか現象はあるのだが、ごめんなさい、ここまで書いて涙ぐんできた。同類として、自分へのメッセージも含めて厳しく書いてきたが、あまりにもモテないメンズが報われない…。なので、もう後編に行かせてくれ…。そこでは、なぜ世の中はこんなことになってしまったかについて少し綴りたいと思う。

*注記*

*1: NBAの一番古い記憶は、父親の膝に座りながら、対戦相手としてやってきたマヌート・ボルを見たこと。230cmを超えるヒョロヒョロのボルを見たとき、幼少ながら「こんな人間が本当にいるのか?」と思ったのが記憶に残っている。

*1.5: (それどころか我が愛しきポートランド・トレイルブレイザーズは「今年こそは…!」と期待するたびに随所随所で不幸や悲劇に見舞われ絶望を与えてくるチームでもある。ドMだったらたまらない話なのだが残念ながらその性癖は持っていない)

*2: 一番の理由は、自分の中にある「平等性」だと考えている。数少ない自分の長所だと思っているが、私コミンズ・リオ、全ての人を平等に扱う。ある意味極限的なほどに。小学生も会社の社長も、ホームレスも芸能人も、全員、上も下もない、1人の人間として接する。天は人の上に人を造らず。これを全うして生きているため、社会的立場の弱いに人間にはよくモテる。彼ら彼女らは、それこそ「周りの人と対等に、普通に扱ってくれる」ことを一番望んでいるからだ。逆に、若い女性や金・権力を持っている男性は、周りより特別に扱って欲しいと、表面には見せなくても潜在的に感じていることが多い。ゆえに、彼らのことも周りの人同様、対等に扱っているコミンズはモテないのだ。

*3: この「モテるの定義を探すため女性にヒアリングする」行為がそもそも「モテない」やつのやることだとは、薄々感づきながらも実行はした。

*4: 個人的なヤリチンの要素は主に以下二つからできている。

経験人数をそもそも覚えてない。年齢にもよるが、最低50、基本的には3桁。

見境なく誰とでも関係をもつことが可能。ストライクゾーンが広い、というレベルの話ではなく、そもそも全ての球を打ちに行っている状態。二足歩行さえしてたらなんでも抱ける猛者ども。

text:
コミンズ リオ
illustration:
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18-04-02