LEO KOMINZ
友達の彼女がみんな可愛いくなってる件
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比較的なんでも思うままに話すことによって人生得したり損したり(最近は損してることが多く感じられる…)してきた私コミンズ・リオだが、一つだけいつも言葉を濁らすシチュエーションがある。それは友達が新しく彼女を作った時だ。「実は彼女できたんだ」とニヤケながら話しかけてくる友達に対し最も正攻法プラス思いやりがある返答は、「えええ!まじで?おめでとう!」の後に「写真見せて!」だ。特にこの「写真見せて」が最も重要だ。なぜなら男は基本的に自分が外見的に好意を持っている女性としか付き合わないし*1、自分が可愛いもしくは綺麗だと思っているその彼女を人に見せびらかしたくてたまらない生き物だからだ*2。

写真を見せてくれるまでの一連の流れの中で、重要な点が一つある。それは「一番可愛いく写ってるやつ見せて!」という台詞をちゃんと言うことだ。男は基本見栄っ張りだから、写真を見せるとなった時には既に一番可愛い写真を用意しているのだが、一応念のためだ*3。なぜこの一言が重要なのか。それはこの「彼女が可愛いく見えるかどうか」が今後の応答のキーポイントになるからだ。

さて、いざ写真を拝見することになり、スマホを覗き込むと*4、二つのリアクションのどちらかにたどり着く。その彼女が普通に可愛かったら「えー、めっちゃ可愛いじゃん!」と褒めまくる。これが心身共にノーストレスで今後会話を進めることができるパターンだ。しかし、万が一その彼女が、その…うーん…コホンッ…「そうでもなかった」時は大変だ。自分の場合は基本的には嘘をつけない体質なのだが、同時に正直な気持ちを述べ友人を傷つけたくもない。そんなことを考えながらも友人は返答を待っている。とりあえず一呼吸置いてから、瞬時にどの答えを選ぶかを判断しなくてはいけない。

答①【他の箇所を褒める】

足が綺麗だったり、スタイルが良かったり、おっぱいが大きかったりする場合に使用できる手段。ひたすらそういった部分を褒める。

例:「すげえスタイルいいじゃん!くびれとかやばそう!え、もしかしてダンスとかやってる人?」

答②【可愛さ以外で褒める】

他の箇所が思いつかなかったり、顔しか写ってない写真だったりする場合、この手段を選ぶ。大人っぽい顔立ちだったり、「オリエンタル」といった基準が曖昧な形容詞が使える外見だったり、あとは似ている芸能人が思いついた場合などに使用。

例:「え、和系の顔ってやつ?クールビューティだね!栗山千秋みたいな?」

答③【秘技:いい子そうだね!】

最終手段がこれだ。突出した他の箇所も思い浮かばなければ似ている芸能人も居ないとなると、もう「いい子そう」としか言いようがない。「性格良さそう」と言ってしまうと相手もさすがに感づき始めるので*5、もはや情報量ゼロの「いい子そう」の一点張りで攻めるしかない。ちなみに【秘技:いい子そうだね】の究極形態が、もはや知能指数の低下を感じさせる【絶技:めっちゃいいじゃん!】だ。この絶技の多用は自己イメージを破壊しかけないので、使用の際は注意を。

例:「え、いい子そうじゃん!めっちゃいいじゃん!(繰り返す)」

上記の三つのテクニックを駆使し、私コミンズ・リオは数々の友人の彼女写真の披露を乗り越えてきた。時にはあまりにも心ない言葉を使用しすぎて表情筋がいろんな方向に歪んでいるケースもあったが、それでも「え、この子?左の子じゃなくて?え…すごくいいじゃん!なんかハーフ系だね。ちょっと滝川クリステルっぽいと言うか。胸も大きそうだし…え、Eカップ?まじで?羨ましいわぁ…巨乳羨ましいわぁ」と言った具合だ。全ては「自分の彼女が可愛くない」と言う、男なら誰もが最も信じたくない事実、汚されたくない自尊心、傷つけられたくないプライドを破損させないため。

しかし、実は最近こう言った対応に出る必要が愕然と減った。理由は明確だ。

友達の彼女がみんな可愛くなってるからだ。

この事実に気付いた時、衝撃を受けた。確かにここ数年、知人・友人から新しくできた彼女の写真を見せてもらうと、みんな普通に可愛い。世間的に見るとちょっと色々残念な友達(失礼ですね)とかが写真を見せてくると、経験による条件反射で未だに身構えてしまうが、いざ見てみるとどうってことない。「え、いい子そうだn…って、あれ?可愛いじゃん!!」となる。この変化と衝撃は計り知れず、個人的には印刷機・蒸気機関・インターネットに並ぶ革命だと思っている(大げさですね)。

しかしそこで疑問に思った。そして考えた。「可愛くない子はみんなどこに行ったんだ?」

一つの答えは、「可愛くない子自体が減っている」という【絶対数減少論】。年をとっていくと女性は自分の「一番」の見せ方を覚えてくる。基本的には化粧と服装によるものだ。しかも「一番」の見せ方を熟知している女性の、さらに「一番」よく写っている写真を彼氏は選定しているわけだから、一番中の一番である。要するに、10年前だったらまだ大学デビューほやほやで、感想が「いい子そうだね」だった女性も、10年後には恋愛の一つや二つを経て、化粧も覚え、写真を撮る上で一番美しく見える角度を理解して、「え、普通に可愛いじゃん!」と素直に言える容姿に磨かれていくということだ。

もう一つの答えは、「可愛くない子と付き合う人が周りからいなくなっている」という、【環境変化論】。マスコミとかエンタメなどの業界にいると、単純に周りに綺麗な人が多い。そうすると綺麗な女性と付き合える可能性が上がり、実際付き合っている人も多い。マスコミ業界ではあるあるだが、先輩の奥さんの写真を見せてもらうと、「え、なんであんたがこんな美人と結婚できたの?」みたいなケースがいくらでもある*6。

さらに一つ答えをあげるとしたら、それは「自分自身が人を『可愛い』と『可愛くない』のカテゴライズをしなくなっている」という、【大人になった・丸くなった論】。今でも周囲の人間からは「永遠に子供」や「無駄にとんがってるピーターパン」などと形容されている私コミンズ・リオだが、そんな自分でもかなり大人になったと思っている。昔だったら瞬時に人の外見を上・中・下×3の27段階で評価していたのが、今では「そんなね、外見とかね。誰にだって魅力的な部分はあるし、どんな美人にもコンプレックスはあるし」と言う実に平和的な考えに肩まで浸かっている。もちろん、ごくたまに根本価値観に天変地異を起こすような超絶美人に遭遇することもあるが(人生で2回ぐらい)、基本的には短いテレビ局・マスコミ生活の中で「外見の良さ」と言う価値は連日ストップ安がかかるぐらい下落していき*7、今では上記で述べたような実に牧歌的な考えに至っている。結局「誰もブスと付き合わなくなった」のではなくて、「そんなブスとかいう概念自体が幼いんだよ。みんな自分がいいなと思っている人と幸せに過ごしているだろう」と言う状態になっただけなのかもしれない。周りが変わったのではなくて自分が変わった、と言う、本連載の中での安定の結論…

…と偉そうに色々語っているが、自分自身を省みると、基本的には人にも会わず、家で一人「ToLOVEる ダークネス」*8を読みながら「こんなにたくさんの可愛い子がいっぺんに俺のこと好きになってくれないかなぁ。ぐひひ」と悦に浸っている人間なので、えーと、本当にごめんなさい。皆様、彼女や奥さんがいるだけで本当にすごいです。もう黙ります。

*注記'S*

*1: もちろん容姿よりは性格重視で付き合う人もたくさんいるが、それでもどこかに外見的な魅力を感じているから付き合っている、とは断定していいと思う。

*2: 女性には理解しがたい感情だとよく言われるのだが、美女を連れてご飯を食べたり歩いている時に、他の男が「自分の女」をチラ見したり、過ぎ去った時に二度見したりすることは、男にとって形容しがたいほどプライドと優越感を満たすのだ。オスの本能だろうか。自分においては基本的にオスの本能は9割がた欠落してるのでよくわからんが。

*3: まだ付き合いたてだと写真を持っていない可能性もあるのだが(正直大抵この「彼女の写真持ってないんだよね」は嘘だと思っている)、その場合、「じゃあFacebook/インスタで見せて!」と返すのが妥当だ。彼女なのだから絶対にSNS上で繋がっているし、何よりFacebook/インスタにはその彼女本人が「自分、これ可愛い!」と思っている写真を挙げているので、選ぶ方も楽になる。ありがとう、Facebook、ありがとうインスタグラム(棒)。

*4: 昔だったらガラケーで見せていたのだろうが、そのさらに前の、携帯端末がない時代はどうしていたのだろうか?写真を持ち運んでいたのだろうか?教えて、年とってる人!

*5:「性格が良さそう」という言葉はなぜここまで不甲斐なく感じるのだろうか?誰でも瞬時に「あ、他にいいところ思いつかないんだな…」と感じる言葉なんてこれ以外そうそうない。ちなみに女性が男性にいう場合は「優しそうな人だね」がそのカウンターパートとなる。

*6: これを読んでいる人にそういう人がいるかどうかはわからないが、友人や恋人関係は完全に環境と連動している。なので女優と付き合いたければ俳優になるのが一番。女子アナと付き合いたければテレビ局員になり、モデルと付き合いたければ写真家になりなさい。これ、ガチで9割事実だから。ちなみに「なんでもいいから芸能人と付き合いたい」と思うなら野球選手になろう!(笑)

*7: ここら辺に関しては今後本連載に登場するであろう「美女について」シリーズで少しずつ深掘っていく。乞うご期待。

*8: 矢吹神。マジ神。

text:
コミンズ リオ
illustration:
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18-04-02