LEO KOMINZ
デートは無意味?
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今でこそ自他共に恋愛適性が人類最弱クラスだと認められた私コミンズ・リオだが、それでも一時期は積極的に女性関係の構築に励んでいた時期があった。初めてちゃんとした彼女ができ、その彼女と別れたあと、何を錯覚したのか「これからはもっとスマートに女性とうまくやっていけるだろう」と思い込み、そのまま様々な女性とデートをした24歳のあの頃。それまでの自分(そして思えば今の自分も)からは想像もできない、一年弱の間に10数名の女性と食事をしたり何かのイベントに訪れた。そしてこんな文章を書いている時点で言うまでもないと思うが、すべて、悉くうまくいかなかった。(※うまくいかなかった理由は100%自分に問題があると自負もしています。相手側にマイナス部分は全くありませんでした)ただ、そこは安直かつ妄信的に結論に辿り着く男、コミンズ・リオ。その時に唱えていた持論こそが今回のテーマ「デートって意味あるの?」だ。

恋愛強者からしてみれば負け犬の遠吠えに聞こえるかもしれないが、当時は(そして繰り返すが少なからず今でも)まったくデートの意味がわからなかった。まず、根本的に楽しくない。すでに付き合い始めたカップルなら、あのお互いが好きで一緒にいるだけで言葉にできないほんわかした高揚感に浸れるので、まだその存在意義はわからなくはないが、付き合ってもいない男女のデートはなにがいいのか?デート前からデート終了の手順をリスト化してみるといかにそれが愚行の羅列かがわかる。

多少感情の部分に脚色があることは認めよう。しかし、世の男性なら大方この気持ちに対して多少は共感ができるのではと思っている*1。

また、上記をみると、いかにデートが無意味に感じられるかが理解できると思う。少し解説を加えたい。まず感情のベースに「緊張」があるので、その時点でマイナスからのスタートだ。そこから魔の三角地帯に入って状況は悪化するばかり。目の前に女性が座っていると、まずどこを見ればいいかわからない。顔をずっと見てるいるのは単純に気持ち悪いだろうし、逆にまったく顔をみないとそれはただの挙動不審。チラチラみるのもNG。(ちなみにデート本などではこの対策として「カウンターに座れ」と書いてある。そうすることによって相手の顔をみなくても不自然に感じられない、らしい。さぁどーだか。)

何を話すかも鬼門だ。中には可愛い顔で笑いながら相槌を打つのがデフォ状態みたいな女性もいる。そういう女性にはずっと何か話題を提供し続けなければならない。なのにデート本には「自分ばっかり話す男性はモテない。相手に話させるのがベター」とか書いてある。どうすればいいんだよ!!それでも例えば「好きな食べ物は?」とか話題を振って、一言「お寿司(ニコッ)」で終わる恐怖よりは数倍マシだから、自分でも意味不明なことを話しつづける。

そして何が一番恐ろしいかと言うと、結局男は女の考えていることなんてなにもわからない。「今日、相手の子すごく楽しんだっぽいな!」と思った日でも、次から連絡が帰ってこない場合が多々ある。武器庫を空にして一斉攻撃をしかけても、相手にダメージを与えているかどうかもわからない。これがソシャゲだったらクレームで制作会社が潰れている。しかしデートの世界ではこれが当たり前なのだ。

最後の「このあとどうする?」が最大の難関だ。正直な気持ちは「今すぐ帰りたい」なのだが、さすがにそれを言葉にしては失礼だ。相手と過ごした時間がもはや一つの試練に感じられた、というのが伝わってはいけない。しかし、間違って「もう一軒行く?」と答えて、先ほどの時間がまた繰り返されるのは(しかも「BAR」などといったザ・オトナな空間により5倍ほどのパンチ力で)絶対に避けなくてはいけない。会計中に脳内で10回ほどリハーサルした、「ごめん、明日朝一で大事な会議でプレゼンなんだ…本当はもう一軒いきたいんだけど、また今度でいいかな?本当にごめん!」と言うセリフをできるだけナチュラルに口にする*2。本当は、今まで一度もそんなことはなかったのに、もしかしたら今回こそデートがすごくうまくいって、盛り上がって、「この後どうする?もう一軒行こうか?近くにいいBAR知っててさ」ってなって、そこでさらに盛り上がって、終電を逃して→お泊まり→ムフフ…みたいな下心があったから、実は念のために翌日午前休を取っているのにも関わらず*3。

そして家。玄関を開け、自宅の中でも最も落ちつくあの場所に座った(or 寝転んだ)瞬間、最大の幸福に包まれる。緊張がほぐれ、徐々に先ほどまで過ごした数時間が蘇ってくる。申し訳ないことをしたのかな…と思ったりもするも、これが現実だ。デートなんて楽しくない。デートは、セックスをする、とか、好きだから付き合いたい、とか、そのあとの目的のための手段でしかない。強い性的欲求や目的意識がないのであれば、デートとはただ緊張して、気を使って、疲れる時間でしかないのだ。そこで問い直したい…デートの意味ってなんぞや?

読みかけていた小説を読破する。気になっていた映画の三部作を見る。ただ無心にネットサーフィンする。気の置けない友達を呼び出し、飲み直す。

気を取り直し、本当に好きなことに朝まで没頭しても問題ない!なぜなら、ちゃんと午前休取っておいたから(笑)

*注記’s*

*1:共感できないてめぇは陽キャ x 根アカ x リア充だからとりあえず一回爆ぜてくれ。

*2: この瞬間ほどアクティングスクールもしくは演技のレッスンを受けておけばよかったと思う時はない。それと彼女に隠し事をする時か。まあ、下記の(*3)でもわかるように、基本的には男の隠し事なんて意味ないのだが。

*3: 本文ではフィットしないので挿入できない重要な点が一つある。それは、私コミンズ・リオ、女のことは基本的になにもわからないけど、唯一女のことでわかるのは、女は男が隠してることとか嘘とかには異常に敏感だということ。なので、ぶっちゃけると、デートの最後にいかに「今日は楽しかった!でも明日朝が早くて…」みたいなことを演技しても、相手はもうわかっている。「こいつ、最初っから緊張しすぎだよ。全然楽しんでなかったじゃん」って、ちゃんとわかっている。だから、ほとんどの場合は、相手から「このあとどうする?」とは聞いてこない。そのまま「今日はありがとう。またね。(またはないけど)」だ。これを言われる時、若干残念な気持ちにもなるが、それより「よっしゃ!これで早く帰れる!」という安堵感のほうが強いので、結局うやむやになってしまう。

text:
コミンズ リオ
illustration:
peeeeechan
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18-04-02